幻樂団の歴史 ~Chart of a Strange Creator. 公聴録

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2015年に京都大学熊野寮において行われた、博麗神主ことZUNさんの講演会の文字起こしです。

動画

前半の部

~Introduction~

<ZUN氏入場>(BGM:童祭 ~ Innocent Treasures …(※1))

ZUN よろしくお願いします。全然準備してなかった。突然(扉が)開けられたからびっくりしたよ今。
司会N その割にはだいぶ速足でしたが(笑)。今日は遠路はるばるありがとうございます。ではよろしくお願いします。
ZUN よろしくおねがいします。
司会N まずは軽く一言ご挨拶の方を。
ZUN あ、はいはい。でも…ビールがまだ…
司会N 挨拶中に来ます。そういう段取りになってますので
ZUN はいはい(笑)。えーと、まあみんながこの京大熊野寮がどういった場所かよく知ってるかは分からないですけど、なかなかここに来るって勇気のいることですよね。僕としてもちょっと見てみたいなとは思ってたんですけど、いざ見てみると「あぁ、これかぁ~」てなって。ここでああいう事件がいろいろと起きてきたんだなぁと(笑)。ちょっと魔窟な感じがして楽しいかなと。ただね、これやってる途中にもしかしたらねぇ、なんかガサ入れとかあるかもしれない。(笑)
司会N まぁ、無いとは思いますけど(笑)
ZUN たぶんここの人たちには関係ないはずですけど、もしそういう可能性のある人がいたら早いうちに自己申告していただけると(笑)。という感じです。皆さんありがとうございます。今日は、こっちも酒飲みながらやるし、一応東方ということじゃなくて今まで割とどういうことやってきたかということをまあだらだらと話していこうかとおもっていますのでよろしくお願いします。

<会場内拍手>

司会N ビールが遅れているため乾杯ができないんです。
司会S 前の方で我々三人で飲んで勝手に酔っぱらってるかもしんないですけど、まあそういうもんだと思って諦めて頂いて。まあどうぞ気楽に聞いて頂いたらと。
ZUN ビール来るまでにちょっと軽く質問していい?皆、大学生はどのくらいいるのかな、ここに。大学生の方、手挙げて。

<会場内半分ほど挙手>

ZUN でもまぁ、半数以上大学生だな~。じゃあ、一応それ以外の人。

<会場内半分ほど挙手>

ZUN まあ、大学生の方が多いかな。
司会N 高校生とかもいるようですけど。
ZUN 社会人の人はどのくらいいます?

<会場内そこそこ挙手>

ZUN あぁ、でも結構いるね。1/3くらい?
司会N なかなかビールがきませんねぇ(笑)。
司会S じゃあ、ちょっと学生時代のお話を
ZUN あぁ、始めちゃう?いいっすよ、いいっすよ。どうせ時間もそんな長くないし。
司会S そうですね。そしたら…お酒が来たらお酒の話をして頂くとして、先にちょっと紹介させて下さい。今回ネット上で皆さんから質問の方を受け付けておりまして、全部で150通ほど頂きました。これを全部ここで言ってるとそれだけで終わってしまいますので全部は拾えないですけど、できるだけ絡ませながら話していきます。じゃあ早速いくつか紹介しましょうか。
ZUN いきなりネットで募集した質問(笑)。
司会N あ、ビールが来たようです。

<ビール登場>一同:よろしくおねがいします。乾杯~。

ZUN なんかサイズがまちまちの気がするんですけど(笑)。では、でかいの貰うよ。大は小を兼ねる。じゃあちょっとずるいかもしんないけどこちらだけ始めちゃうよ。今日いい天気だったしねぇ。
司会N そうですね。お酒がおいしい日和で。

<会場内拍手>

ZUN 今日午前中に京都御苑に行ってそのあと二条城行ってきたんです。天気よかったんでふらふら歩いたりしてたんで、すげぇ飲みたかった(笑)。
司会N ちょっと(ここに)来るとき道に迷っちゃったようですが(…※2
ZUN そうそう。Googleマップで調べると違う場所が出るんだよ。ちょっとずれた場所に出てさ。他に二、三人同じように迷ってる人いたよ。
司会N 受付の方にもそんな問い合わせきてまして、一応対応したんですけど

I.はじまり ~ 1996-2004

司会S じゃあお酒の話を。
司会N 最近なんか大学の方からもお酒の飲み方について結構口うるさいんですけど、その辺についてZUNさんは一家言、ニ家言もってそうなのでお聞きしたいんですが。
ZUN 大学の方っていうと体育会系の飲み方の事?
司会N まぁ、「未成年以下はもうほんとに全面禁止‼」みたいな。
ZUN そうだよね。まぁ、それはもう大学が禁止しなくても法律で禁止されてるから(笑)。
司会NS まぁ確かに(笑)。
ZUN でも僕は大学生が18歳だからお酒も18歳以上にしてもいいと思うんだよね。成人も18歳以上にする流れっぽいからいずれそうなるんじゃないかと思ってる。だって、無理だよ(笑)。大学で新歓コンパで新入生喜ばせるのに、新入生だけお酒飲めないってさ。
司会S ZUNさん、そのお酒との付き合い方や飲み方について何かお話しあったらお願いします。
ZUN 大学生の時にみんな大体失敗するんだよね、お酒って。それでお酒嫌いになるって人、結構居るんだよ。勿体ないことだよね。やっぱ結構いいお酒の飲み方をした方がいいと思う。社会人になってもいい酒を飲む人と付き合った方がいいと思う。まぁお酒飲めない人は無理して飲む必要ないですけど、飲める人は…飲んだ方が…。普段の生活楽しいよ。経済効果にもつながるし(笑)。10年前くらいになるかもしれないけど、結構大学の講演の方もちょくちょく行ってて、その、お酒禁止の大学もある。
司会N 東大のほうでも取り上げられたとか(…※3
ZUN 東大でやった時は、「お酒大丈夫ですよ」って言われてお酒持ってきて飲んでたら、途中で取り上げられて僕が怒られるっていう。あれは酷い(笑)。ちょうど一、二年生が多い場所だったので、そこで飲むなって言われたけど言われたってねぇ。
司会N まあ今日はそんなことはないと思います。
ZUN 明大でやった時(…※4)はもう全面酒禁止。酒で事故した奴がいて、それに対して禁止とかね。大体厳しいよみんな。
司会S そんな中、お酒ありのイベントがあったとか。
ZUN 昔あったんだよね。同人即売会でお酒OKのイベントがあったんだよ、東方の。何だっけ、えーと…縁側。博麗神社の縁側だったかな。あれはねぇ今だから言えるけど、結構救急車来たりで阿鼻叫喚だったんだよね。僕も各サークル回ると各サークルで即売会なのにみんな本を売るというより持ち寄った酒をみんなで飲み合って(笑)。サークル全部回るころには一日かけてすげぇ飲んで。ようやく終わったからトイレでも行こうと思ったらトイレの前が死屍累々で。廊下で倒れてるわ。んで、トイレ入ろうとしたら「今そっち入んない方がいいですよ。便器割った奴いますよ」って(笑)。これはもうやべぇ、事件になるかなって思ったら、帰り際に会場から「あんなに人が集まったの初めてなので、またやって下さい」とか言われたらしいけど、さすがに申し訳なくてそれ以降会場できなかったらしい。
司会N 調べたら最近はやってるようですよ。
ZUN もう凄かった。あれはちょっとねぇ、今やったら完全に炎上するよ(笑)。「今からイベント始めまーす」って言って鏡割りやったりしてさ。あれは…だめだったね。
司会S では先程のネット上の質問から一つご紹介します。
質問「初めてお酒というものに興味が湧いて、呑んでみたいと思うようになったのはいくつの時ですか?東方Projectはアルコール成分何%で構成されていますか?」
ZUN お酒は勿論二十歳ですよ。そりゃそうだよねぇ(笑)。

<会場内爆笑>

司会N 飲んでみたいなぁと思ったのは?
ZUN 飲んでみたいと思ったのも…二十歳ですよ(笑)。
司会S 皆さんもそうあってほしいものですよね。
ZUN そうですね。そりゃそうですよ。…そりゃそうですよ(笑)。
司会N 今回メールにも書きましたので。(…※5
ZUN そうそう、二十歳です。
司会S あと、東方projectはアルコール何%ですかと
ZUN それはねぇ…まあどういう質問かよく分からないけど(笑)、普通でビールを飲んでるから5%くらいじゃない?
司会S ではそのくらいでお酒の話は終わりにしますか。
ZUN お酒話し始めたら尽きないからね。たくさん入れ始めたらね、こっちが。
司会N 講演の趣旨が変わっちゃいますしね。
司会S それではそろそろ本題の創作活動の話に移らせて頂きましょう。ここからは時間の流れに沿ってその時々の話を聞いていきたいと思います。
司会N 大学時代から制作始められたという話ですけど、当時はどういう生活して作ってたんですか?
ZUN 大変だったよ。もう20年近く前だからね。当時はね、あんまり学校に行ってなくて最低限の単位だけ取る感じだった。もちろんあれだよ、留年はしてないよ(笑)。ちゃんと単位とる分ぐらいは行って、それ以外はもう…週に5回くらいしか起きない。一週間が5日くらいしかなかった。起きたらゲーム作ったり、ゲーセン行ったりしてる状態で。
司会N フリーダムですねぇ。
ZUN フリーダムだったねぇ。大学生はフリーダムだよ。体調的にその方が合ってたんだよ。長く寝て長く起きてを繰り返してた。
司会N 結構そういう寮生もいますね
ZUN 一日24時間だともう忙しなくて、結構きついって感じてたんだよね。こたつの上にパソコン置いて、こたつで寝て、起きてパソコンの電源つけて。ピコ、ピコって鳴るんだよ昔のやつ。んでまたゲーム作ったりして、パソコン消して寝てた。インターネットとかも繋がってないからほんとにパソコンだけだよ。
司会N ほんとにゲーム作るためだけに
ZUN そうそう。そこでネットサーフィンとかしてるわけじゃない。
司会S では次の話につなげる前に、作品の内容というかそれに関わる質問を幾つか述べさせていただきたいと思います。
質問「どういった経緯で東方の世界感を考案したのでしょうか。また、どういった手順で構築していったのでしょうか(例えばキャラを作ってから世界感を作りました、など)」
  という質問ですけれども、最初に思いついて作られた時の思い付きとかどんなことだったんでしょうか。
ZUN 当時ね、巫女さんってほとんどキャラクターとして存在しなかったの。で、すげぇ巫女さんを使いたくて。巫女さんの出てくるゲームなんてほとんど無かったからね。ゲーム限らず作品で。だからすごいマイナーな存在だったの。んで使いたくて、だから東方って名前にして作ったと。その後から急に巫女ブームが始まったんだけど(笑)。いろんなゲームに必ず1巫女がいるみたいな。
司会S ではその巫女つながりで妖怪とかも出たという感じにしたんですね。  
ZUN そうそう。やっぱねぇ、今だとそう映らないかもしれないけど巫女を出すだけで特徴があった。そういう時代だった。今になると参考にはならないけど。キャラクターもすごく多くなっちゃったし。もう世の中キャラクター化してないものなんて無いみたいな状態だからね。
司会N やり尽された感がありますね。
ZUN そうじゃなかったからね。当時は。
司会S そしたら、もう一点だけいいですか。
質問「東方projectが製作開始から20年が経ちますが、同人活動を始めた時はどのような未来構造図を持ってたんですか?また同人活動を始めたのが学生の時だとお聞きしましたが、当時どのような困難がありましたか?」
ZUN 大学の時は同人っていう単語も知らなかったから。コミケの存在も知らなかったし。普通にパソコンを初めて大学で触ったので、まぁ、ゲーム作れるなら作ってみようかなって感じでしたよ。将来的にはゲーム会社に入ってゲームを作ろうかなと思ってたので、大学中に勉強しとけばなと。必死になって勉強して、必死に作ってって感じでしたよ。結果それは同人っていう枠があってそれに入ったという感じなんですけど、大学の当時は何にも考えてなかったです。ゲーム会社に入って将来ゲームを作るために勉強してるって感じ。

II.一つの区切り ~ 2004-2006

司会N では次の話題に。その後、上海アリス幻樂団として復活されて紅魔郷、妖々夢と作品を作られていったんですけど、2004年に香霖堂の連載を始められましたよね。
ZUN もうあれ11年前になるんだよね。
司会N 見てるとこの小説が連載作品の始まりになるわけですが、まずこちらどういうきっかけから始まったのかとか、どういうあれで始められたのかお聞きしたいのですが。
ZUN それは話を持ってきた人がいるんですよ。いまどうしてるのかあまりよく知らないんですけど。当時、僕から始めたいっていうのじゃなくて、「仕事としてこういうのやってみない?」って来たのが最初でした。小説でエロゲ—雑誌というね、かなり特殊な状態でしたけど。あの当時、同人からメジャー化していくっていうのが若干夢がある話だったの。まあ今もあるのかもしれないですけど(笑)。今の直接ツールになるとかじゃなくてちょうど月姫さんがあって、ってな時代だったからその流れで東方もやるのかなって感じでしたね。
司会N そういったところに、商業への進出とかそういうことに関してはZUNさんもの凄く気を使っているというのが皆さんの認識だと思うんですけど、そういうところはどう考えて話を受けられたのでしょうか。
ZUN あまりあの小説自体も商業でやってるイメージが無いんだよ。無かったんだよ当時も。
司会S では商業だからちょっと変えるとかいう思考は全然無しと
ZUN 無くて、あれに関してはちょっと他の場面から見て小説を書いたらゲーム自体がすごく面白くなるんじゃないかと思ってやってたという感じです。
司会N 同人でのゲーム制作の延長みたいな
ZUN Windows版になってからキャラクターを凄い重視するようにして、キャラクターで世界を作って一つのゲームを作るようにしたので、そのキャラクターの魅力を作るために小説とかあったらよりよくなるんじゃないかって考え方です。それでゲームも面白くなるであろうと。
司会S 世界を広げていくというような感じで。
ZUN そうそう。今ではそこの流れでほとんど東方は成り立っている。ゲームだけで完結させるのは難しかったんだよね。
司会N そういう意味ではちょうどいい時にちょうどいい話が来た感じですね。
司会S そのあたりから世界観がどんどん広がってちゃんとしたものになっていったっていう話なんですかね。
ZUN そうそうそうそう。ゲームだけだとね。ゲームのキャラクターだと絶対倒さなきゃいけないし倒せば死ぬしもうワンパターンになるんだよ。シューティングで負けイベントとか作りづらいじゃん(笑)。嫌じゃんそういうの。RPGとかでもあんま好きじゃないんだけど。なんか負けイベントあるとすげぇイラッとするんだよ。
司会N わざわざ負けないといけませんからね。
ZUN ガチで戦って普通に倒せそうなのも嫌だし、どうやっても倒せないなってのも興ざめだし、あまり好きじゃないんだよ。ストーリー的にはそうしないとしょうがないということがどうしても出てくるんだよね。
司会S 香霖堂で一つ広がったというかそれに関して一つ質問を紹介したいんですけれども
質問「どうして東方projectは、最初に男性を主人公にしなかったのですか。最初に男性が主人公でもよかったのでわないでしょうか。どうか教えてください。東方projectはもう一人の男性主人公を作ることは、ありますか。」
ZUN 今の話でいうと巫女さんに釣られたからだよ(笑)

<会場内爆笑>

ZUN そのあとにあんまり男キャラが出てこないのは…

<ここで寮内放送>

ZUN なんか言ってるぞ(笑)。出てこないのは女の子たちが戦ってるところに男が出てくるとシリアスにするしかなくなると思うんです、戦いが。きゃっきゃわいわいうまくいいバランスできているところにガチな奴が入ってきてしかもそいつやられるじゃん。恥ずかしいじゃん(笑)。そんなキャラクターすげぇ作りづらいって。そうするとしょうがないかなって。
司会N なんか大きな事件あっても結局何も無かったみたいな感じで終わっちゃいますしね。
ZUN あと弾幕ってあんまり男性的じゃないと思う。もっと男性的なキャラクター作りたかったら大砲でドーンって感じですよ。戦闘機のねってイメージですよ。世界にあんま合ってないかなって。女の子の方がたぶん受ける(笑)。
司会N 確かにちゃんと受けてますね(笑)。
司会S さっきの質問の続きでもう一人男性の主人公を作ることはありますか。このもう一人っていうのは要するに霖之助のことを考えてだと思うんですけど。まあそれはあまり可能性としては
ZUN でもあるっちゃあるよ。全然ゲーム以外でなら可能性あるよ。
司会S じゃあ要するに弾幕撃って戦う人じゃなければっていうことですか。
ZUN そうそう。まあ需要はあるかどうかていうのもね(笑)。
司会N 香霖堂の話ありますけど、同人から商業に入っていってそれからノベル化なりアニメ化なりどんどん展開していってコンテンツがよく分からなくなるという話もありますがそういう所に関してZUNさんどう考えておられるのでしょうか。
ZUN そうなんだよね。ちょうど00年代って言い方もあれですけど10年前くらいはさっき言ったように同人からアニメ化までして成功する流れってのが結構あって、まあひぐらしさんとか。あと結構ちょこちょこそれを狙ってるノベルゲームってあったんですよ。そのレールに乗っているっていうね。僕は単純にそれがすごい心配だったので。使い捨てされるんだろうなって思ったのでその時に乗らなかったってのはある。そこで使い捨てされなかったのはType-Moonくらいなんじゃねぇのと思っちゃうんだけど(笑)。
司会N 今でも健在ですからね。
司会S まあ使われ続けてるというか。
ZUN あれとかもうまいバランスでやってるんだろうなって思いますよ。
司会S 質問の中にも一個一個は紹介しませんけれども、アニメ化は考えてますかとか、アニメをいつか作ってくださいとか、アニメにするんだったら原作のゲームから作るんですかとかアニメ化に関してはいろいろ質問頂いてるんですけど。
司会N みんな求めてるんでしょうね。
ZUN アニメはね求められることはあるのかもしれないけどね、わかんないね。今のままのアニメだとちょっと参加しづらいっていう話かな。
司会S それは作り方の問題とか?
ZUN 作り方だし、アニメ業界も今のままじゃないでしょうからほんといろいろ変わってくる。ただその時は分かんないでしょうね。
司会S 作るとしたらご自身も参加して作りたいというようなことは
ZUN そうだね。作るんだったらそれ専用の世界、ストーリーにしないといけないじゃん。とするとその手間めんどくさいんだよね(笑)。僕あんまアニメ見ないからアニメの面白さも研究しなくちゃいけないんでそれが若干めんどくさい。
司会N よく実写でやりたいとか仰ってますが
ZUN 実写ね面白そうだもん(笑)。実写いいよね。でも結構二次創作で実写やってる人いるんだよ。もう馬鹿げてるやつ。今年の例大祭の秋、秋季例大祭行ったら実写の格ゲーがあって、全員男たちがコスプレしてるっていう。

<会場内爆笑>

ZUN あれ面白れぇなって立ち止まったら、僕その時、取材受けてて取材の人も回ってたんですけど、フランスのドキュメンタリー映画で凄ぇ撮ってて、「撮っていいですか?」って撮ってたからもしかしたら使われるかもしれない(笑)。これふざけてるね。よく途中でモチベーション落ちないねっていう。一枚一枚撮ってるカットは面白いけど、あれをゲームにするまでやったら結構疲れる。そういう実写のバカっぽいのはいいなと思ってる。
司会S 世の中のコンテンツがいろんなメディアに展開してメディアミックスというのは昔よく言われましたけど、それがアニメになったりしてすごく複雑になってますよね。いったい誰がこの作品を作ってるのか分からないというか
ZUN それがやなんだよね。誰もコントロールできない状態になってる作品って多いと思うんだよ。特に漫画やラノベからアニメ化したものだと原作者がもうアニメに口出せないという。で、勝手に話変えられてるみたいなことはたぶんあると思う。
司会S アニメだけの展開とかいう
ZUN で、もう自分でグッズ作ろうと思ったらアニメの製作元から止められるということはあるので、それはちょっと避けたい。
司会S 版権とか権利の問題とか色々ありますしね。
ZUN たぶんアニメ化したら二次創作がアニメの会社から止められる可能性もある。だから結構めんどくさいことになると思うんだよ。
司会S ではなかなかアニメ化というところは難しいと
ZUN アニメはグッズで稼ごうとか思ってるわけだから、それを勝手に二次創作で作られたらもうアニメ作ったってしょうがない。
司会S 今までのは商業の流れに乗ってもっとメジャーになってくという話でしたけど、ちょっと質問で頂いてるのが
質問「二次創作を条件下で許したきっかけとかありますか。」
ZUN 条件付きで許したっていう考え方はちょっと間違いで、勝手に二次創作はみんなし始めたわけだよ。それに対してあとからルールをつけているわけだから後から条件が付いているわけだよね。
司会N 逆なんですね。
ZUN そうそう。二次創作が先にあるんだよ。許可したからじゃないんだよ。先にもう既にある状態でこっちが条件をつけていると。
司会S それはどういう観点でこれは条件を与えた方がいいなと考えたのですか。
ZUN 条件はね求められるんですよ。単純に。「すみません。これいいんですか?いいんですか?」って言われると困るから、じゃあ最初にこちらでガイドラインを出しときますよと。
司会S じゃあZUNさんが絞ってるわけじゃなくて、みんなに聞かれるから用意するしかなくなったと。
司会N 自然な流れでできてったんですね。
ZUN その時のいわゆる慣例的な同人っていうのがどういうものかを見てそれでルールをつけた。そのルールはそんな厳しいものじゃないはずなのね。その時だったらみんなが暗黙の了解でやってたようなルール。
司会N このスタンスっていうのは、サブカル業界の中でもかなり珍しい。
ZUN 今だからこそ二次創作に寛容なとこも結構多いですけど、当時は…今でもみんなそういうと思うんですけど、「見逃してもらってるんだ」くらいの感覚でみんなやってたわけだよね。実際見てる方も「見逃してやってるんだ」的な感じの見方をしてたと思うんだけど、明文化は…して成功してる例ももちろんありますけど、やっぱりそこも元々二次創作が多かったから明文化したって感じだと思うんですよね。初音ミクとか。
司会N 必要に求められて。
ZUN でもやっぱ先に二次創作する人の方が多いしパワーもあるので、ほとんどルールはそっちで決まるんですよ。
司会N ある程度でもコントロールできているってのはやっぱ珍しいですよね。
ZUN 作品が結局僕一人で作ってるからコントロールしやすいというのもあると思います。僕がダメって言えばダメっていうルールなわけですよ。
司会S 今の話でいくとご自身で出されるゲームとかは100%ZUNというわけですけど、三月精とか漫画の作品となるとどうなんでしょうか。
ZUN そうなると若干心配なところあるよね。キャラクターや設定に関してなら僕で問題ないんですけど、例えば三月精っていう名前を使おうと思うとそれは角川に一旦許可が必要になるでしょうし。まあ角川も緩いんでね(笑)。東方に関しては緩いですよ。
司会N 両者がうまく合致して今の状況というわけで
ZUN あまり派手なことやると怖いからその辺はなかなかね。
司会S 格闘ゲームとかで黄昏フロンティアさんと一緒にやったりするのはまた違うんでしょうか。
ZUN あれもまた別…別でもないですけど。
司会S 部分的に自分の手から離れるというのがあると思うんですけどそういう所はどういう感じで。
ZUN どちらかっていうと重要な部分は基本僕が作ってるわけですよ、このゲームの。重要っていうか僕が作んなきゃいけない所。それ以外の要は技術的な部分を担うのも、実際の作業量分的なところはまあ僕がやろうがなんだろうが…もうプロに任せればいいよっていう感じだと。
司会N コンテンツとしてはZUNさんにあると
ZUN 例えば普通のゲームデザイナーとかもみんなそうですよ。細かいところまで作んなきゃ自分で作ったって言えないことはない。例えば格ゲーだと一人で作れないからね、いくらなんでも。
司会N 作業量が尋常じゃないですからね。
ZUN そうそう。もうドット絵の数とか半端じゃない。そこを全部自分でやんなきゃ自分で作ったとは言えないということはないです。
司会S では一つ質問を紹介させて頂くんですけど
質問「東方20周年、おめでとうございます。私は紅魔郷時代の作品が特に好きです。質問ですが、作品製作や世界観において、2002年頃の上海アリスが誕生した時から変わっていない信念や思想があれば、教えていただけると嬉しいです。」
  難しいことなんですけど、今まで順番に見てきまして最初御一人で作られていたところから、絵柄とかシステムとかを多少他の人に任せるようなふうに変わって来たりしたわけですが、何か考え方の変化などはあったのでしょうか。
ZUN そうですね、僕はもちろん変えようとしてます。もし信念があるとしたらその時代に合わせてできる限り変えていこうと。自分を。それがその最初から変わっていない信念かなと。
司会S むしろ柔軟に対応していくこと自体が信念と
ZUN その時々に合わせて変化できるようにしたい。それは昔から変わってない。
司会S その要請でたまたま仲間ができたから一緒にやるというような。
ZUN いろいろやってみたり、ちょっと新しいのは例えばPSの方に出してみましょうとか、そういうのも当時の信念のままなの。やってるからあるって感じかな。
司会N 流れに乗るにしてもZUNさん乗り方がもの凄くうまいですよね。雑誌に関してもそうですし。ああいうのその場その場でどう考えてるんですか。
ZUN 感覚かな。雰囲気で「ああこれはあかんやつだ」と思ったら触らないとか。もちろん失敗することも多いですからね(笑)。
司会S 結構質問でも失敗談とか苦労話みたいなのをぜひ紹介してほしいというようなお声があったんですけど、何かそういうエピソードはありますか?
ZUN (考え中)…これは完全に失敗だったとかじゃないんですけど、すごい今同人ソフトっていうものがコミケの中での立ち位置が危うくなっている感じがするんですよね。それは…僕のせいではないとは思ってるんだけど、もしかしたら東方のせいもあるのかなと思ったりして、あまり僕が同人、同人言い過ぎることが良くなかったなと思ってる。それが今、ちょっとした失敗かなと思ってる。あんまりゲーム業界にいい影響じゃなかったかもしれないけど。もうちょっと自由に、やっぱり東方ってものが同人で出てる程度にしといた方がよかったのかなと思ってる。
司会N 巨大になり過ぎたというか
ZUN そうそう。同人ソフト全体の影響力よりでかくなったよってなるともうあんまり下手なこと言っちゃいけない。て、思いました。今更ですけど。
司会S 常に持ってらっしゃる視点が大きいんだなというのを感じますね。
ZUN 別に今だから大きいんだよ。当時は何も考えてないです。寝ながらパソコンとモニターしか見てなかった(笑)。
司会N だんだん大きくなってきたんですね。
ZUN それは仕方がない。それもやっぱり自分をその時に合わせて変えるっていう信念を持ってるからだよ。
司会S それは、やっぱり対応するには周りを見なきゃということでしょうね。
ZUN ずーっと自分だけ見て内にだけこもってるわけにもいかなくなったんだよね。
司会S なんとなく分かってきたような気がします。
ZUN でも今こうやって言ってるけどやっぱり10年以上前の話ってあんま覚えてないんだよね(笑)。あの時どう思ったのかなぁって言われても、心の事はほとんど分かんなくて。今だってあの時あれが辛かったとか、あれが楽しかったぐらいしか覚えてない。ほんと、ゲーム作るのは必死だったっていうのだけは覚えてる。睡眠時間とかもあんま取れないし、精々会社でちょっと寝るみたいな、昼休みに寝るくらいの感じでしたけど。
司会N その時その時は必死だったと
ZUN そう必死。必死だけど仕事としてやってるというよりは必死が楽しいというね。
司会S お仕事始められて以降の作品となると…?
ZUN 2002年からだから紅魔郷からになるね。
司会S じゃあこの辺りはずっと会社で仕事しながらこっちはこっちでつくりながらという生活で
ZUN 会社終わるのが1時くらいでさ、帰ってきて3時くらいまで勉強して、今までWindowsのプログラミングもしたことなかったから勉強して作るっていう毎日でした。でももう、昔より全然楽だよねパソコン触るの。もうインターネットで調べれば作り方が分かるみたいな状態だったし。すぐでしたよ、そのまま。
司会N なかなかにハードなスケジュールですよね。
ZUN ハードでした。だから今考えると、そこまで頑張んなくてもよかったなと。あれで成功したからいいけどさ、しなかったらたぶんほんとに後悔だけだよ。
司会S そしたらこの商業ベースで小説とかを出されてた時もまだ勤めてらっしゃったんですか。
ZUN まあ勤めてたね。
司会S 会社からなんかそういうこと言われたりとかしなかったんですか?
ZUN えぇ、言われた言われた。お前会社で原稿書いてるのばれてるぞみたいな(笑)。

<会場内爆笑>

司会N 逆に会社からこんなの作りたいみたいな提案とかはなかったんですか?
ZUN 言われたねそれも。 会社で作ろうよ、会社で出そうよって。いやいや、嫌ですって(笑)。
司会S それはやっぱ会社ではできないと
ZUN 一応その、それまで結構ほかの会社から出そうってのがあったんです。結構大手なゲーム会社幾つかからこれでアーケード出そうとかコンシューマー出そうっていう話はすげぇ来てて、全部「実はこう見えて僕ゲーム会社勤めてて、そういうこと出来ないんですよ」って言ってたら、自社から言われて(笑)。自社から言われたら「んーどうしよっかな。じゃあ、嫌です」と(笑)。言い訳がなくなっちゃうよ。

<会場内爆笑>

ZUN 嫌だったのは会社で作るともうその後コンテンツは全部会社のものになるので自分ではもうほとんどできない。
司会N やってること全部統一されちゃうんですね。
ZUN そう。だから勿体ないなと思って、それは。
司会S ずっと手元に残しとく方がいいと
ZUN そうだし、作るのも楽しいから自由に作れなかったらもうそれは僕の中では作品としては終わりで、それはおしまいにして次行こうって気になっちゃうよね。
司会N 作品をずっと手元に残しておきたいという所はずっと変わらないように見えますが、今のコンテンツに対する考え方というのはどうなっているのでしょうか?
ZUN 勿論コンテンツは自分の手元に置きたい。むしろコントロール下にあることが幸せの一つかなと思ってる。人によってそれは幸せの感じ方違うので自分は成功したものを次々と出した方が嬉しい人もいるかもしれないし、もう既に有名なものにちょっと自分が触れることが嬉しいっていう人もいるでしょう。僕はもうそのまま有名になんなくてもいいけど、自分で自由にできるものがここに存在するっていうことの方が幸せ。
司会NS ありがとうございます。
ZUN 大学卒業したのが98年だったかな。それから2002年まで4年間くらいゲーム作んなかったんですけど。ていうか僕の中では98年で一応東方projectはそれでおしまいの予定だったんだよね。大学卒業したらさすがにゲーム会社に就職しているときにゲーム作るわけねぇだろって(笑)。って、思ったんだけど、いろいろあったんですよ。会社で企画を持ってきてっていうのがあって、でシューティング作ろうって話になって、でシューティングの企画をみんな集めましょうって言って企画書書いて出したんだよ。それが今の紅魔郷とほぼ一緒なんですけど、スペルカードシステムがあってキャラクターを最初に持たせることによってそのゲームが面白くなりますっていう風に言ってたんだけど、そのシューティングを作ろうっていう企画自体がポシャって。その企画が没になるもなにも、結局シューティングが作れなかったのでまた不満が。これ今出したら売れるな、絶対売れるなって思ったんだよ、この企画で。
司会S それは、出しとけば良かったですね(笑)。
ZUN やっぱ絶対キャラクターの時代が来ると思ったんだよ。でシューティング、特に弾幕シューティングはキャラクターに向いてると思った。で実際、大学の時作ってた時代でもその片鱗があったのでじゃあこれは全然いけるなと。ほっとけばたぶんCAVEさんかどっかが勝手にやるなと思ってたくらい。

~Q&A~

司会S コンテンツの話が一区切りついたので。今回の講演は創作のスタンスとか展開について詳しく掘り下げていくわけなのですが、そこからこぼれそうな質問の方をこの場で紹介させて頂きます。一つは音楽の話。これはZUNさん話すの難しいと仰いますけど、皆さん聞きたい質問でもありますので質問させて頂きます。
質問「東方の初期の頃は音楽を聴いてもらいたいためにゲームを作ったというお話をよく耳にしますが、20年経ってそのスタンスに変化はあったのでしょうか?」
ZUN それはインタビューで何度も言ってる通り、最初はそうだったんだよね。ゲームミュージックが作りたかったんです、大学の時に。だけど、ゲームミュージックつくるためにはゲームがなきゃいけないんだね。その当時、いきなりゲームミュージック作りたいんですって言って作った曲がゲームに入るなんて想像出来ないので、ゲームも作るしかなかったのね。無きゃ作るという感覚でした。
司会S 他の質問で例えば、作品において最も重視している要素は何ですかという質問もあるんですけど、最初は音楽を作りたいからでそれからやりたいことは変わっていかれた?
ZUN 勿論変わるよね。それは最初のきっかけなので。今でも自分の曲をゲームに流したいと思ったらわざわざ作ることなんかしないで他のゲームに依頼受けてやればいいじゃんっていう。まあ今だったらできますけど。それでもいいんですけど。それからスタンス変わってゲーム作りたくなってきてゲームを作る、にはなります。
司会S あとは多かったのは、音楽だけじゃないんですけど必要な技術、例えば作曲、プログラミング、キャラデザインなどそういうものをどういう風に勉強したのかというような質問も頂いてますけども。
ZUN それを聞いてどうするかって言ったらたぶん同じことやるんでしょうけど(笑)、独学です。全く何かに習ったとかでもないです。
司会N 見てきたもの聞いてきたもの
ZUN そうそう、見てきて自分でどうすればいいかすら自分で試行錯誤しかない。今もそうです。ずっとそれの延長だよ、試行錯誤試行錯誤。あまり近道はないね。あるのかもしれないけど、部分的には。
司会S でもやっぱりそういう近道には興味がないと。
ZUN ないです。そこ近道してできるやつは結果みんな出来るものなので、いくら技術が高くても無駄ですよ。無駄っていうか…無駄ではないですけど。そういうのを売りにすることは出来るでしょうけど、僕としては無駄だよ。
司会N どこかでこう生きてくるというか。そういう回り道が。
ZUN そうそう。作品の結果が欲しいわけじゃないからね。その間に作るものがすごく作りたいわけだから。ほんとに作品メーカー、東方メーカーってボタン押したら東方ができるみたいなものを望んでるわけじゃないんですよ。
司会N あくまで過程で。じゃあ作った後の作品にはあまり興味ないと
ZUN そうそう(笑)。それはもうあんま変わってないね。作りたいから作るんだからそりゃそうだよ。出来たゲームが欲しいわけじゃないからね。
司会S あえて自分の方法論開示して別にみんなに倣ってほしいということも思わない。
ZUN 特に思わない。僕通りにやったからと言って、同じゲームが…もしかしたらできるかもしれないけど、それを望んでるような人とは考え方が違う。
司会N それは結果がほしいだけですからね。多くの人は結果が欲しいんでしょうけれど。
ZUN 結果がね。結果が欲しい人は大体うまくいかないんだよね。
司会S なんかこの今日会場にいらっしゃってる方々の熱心さというか、ものすごい一生懸命メモとってる方もいらっしゃるし。
ZUN でも大学生が多いとかなるとそうだよね。これから先…今ならまだ、まだ大丈夫だからね(笑)。まだ可能性はあるからね。
司会S 勉強しに来られてるんやろうなというような感じで
ZUN いやでもちょっとねぇ、勉強するような内容ほどではない。こっちも酔っ払って話してるとこあるので(笑)。

<会場内笑>

ZUN 話半分に聞きながら「ああなるほどな。共感できるとこもあるなぁ。いやそれは共感できないなぁ」って感覚で見てもらえたらいいかな。
司会S まあそれが大事ですね。
ZUN ああいう考え方してる人もいるんだなって感じで。  
司会S あと一つ、これは僕も興味があってお聞きしたい。
質問「ゲーム内での曲をCDにてアレンジする際、何を考えていますか? CDの曲はゲームよりも落ち着いた感じがして、通勤時間に聴いております。」
ZUN 落ち着いて感じっていうか、全体的にテンポが遅い。ゲームの方がどうしても速くなる。それはゲームに合わせようとして作ってるからしょうがないし、でもあれをそのまま聞くとちょっと速過ぎるんだよね。
司会N 今日も開始前に音楽流してて、最初ゲームの曲使おうかと思ったんですけど激しすぎて聞けないんですよ。
ZUN 疲れちゃうでしょ。あまり長時間聞けないんです。やっぱりその元々バックグラウンドミュージックというか、何かメインのものがあってそれを演出するための曲って考え方だから、ゲームの曲はもう完全にシューティングってものに向いた速い、アップテンポの曲になってる。そういう考え方の差があります。CDの方はまあ、もう、そんなにねぇ(笑)。割と自由に作っていいのかなと。おまけみたいなものですし。CDをメインにするってやっぱ難しくて。音楽でやってる人は当然それがメインな訳なんですけど、僕が作ってる音楽CDなんかよりは全然もっといろんなこときっと考えて作ってると思うんですよ。特にボーカルあるやつとかね。かなり考えて作んないといけないと思うんだよね。
司会S ZUNさんがきっと言葉にならないようなところをきっと音楽にされているんですよね。で面白いと思うのが二次創作で東方の曲と言ったらボーカル曲がすごく人気になるんですよね。でやっぱメロディがすごく印象的でそれを何とか詩に合わせて、苦労して考えてボーカル曲作ってらっしゃると思うんですけど、そういったところどういう感じで見ているんですか?
ZUN ボーカル曲がね、例えば10年前、ニコニコが始まった当時ぐらいでもボーカル曲ってあんまなかったんだよね、二次創作で。ほとんどは打ち込みだけ、生演奏もほとんどないって感じだったんですけど。もちろんちょこちょこありましたけど。それがいつの間にかボーカルばっかりになったのは別にその、東方とかじゃなくてボーカルで作るってこと自体の技術が上がったんだよ。そうしたらやっぱりもう出来るんだったらボーカルつけようかなっていう人のが多いんじゃないかなと思ってます。その方がライブ映えもしますしね。大体曲を作ったり編曲をしているいかついあんちゃんたちの真ん中にきれいな女の子がいれば見映えするかなって考えると思う(笑)。そりゃあ、アーティストの事馬鹿にしているわけじゃないんですけど、音楽を作っている人たちは場面に出てライブするまでがワンセットでの世界ですからね。そこまでちゃんと演出しないといけないですよ。僕はそういうことがしたいわけじゃないから音楽CDに関しては割とおまけというか、創作のメインにはしてない。それをメインにしちゃうと結構大変だろうなって思って。
司会S 小説とかはさっき世界観を広げるためと仰ってたんですけど、じゃあ音楽CDとかは?
ZUN あれはほんと箸休めです(笑)。たまにゲームに使えない曲とか作ってみたくなるんですよ。ゲームの曲なんて激しい曲ばっかですから。シューティングだからしょうがないんだけど。もちろん東方らしさを失わないような曲なんだけど、ゲームでは使いにくい曲って、まぁ作りたくなるんだよ。そういう作りたくなったのを入れたものって感じ。
司会S 音楽の話以外でこれはいいなと思ったのがあるんですけど
質問「ZUNさんが思う、作品のモチーフになっている、日本伝奇などの一番の魅力とは何でしょうか?」
ZUN 結構大きく出た話ですね。魅力と言えばやっぱみんな知ってることじゃないかな。ある程度。妖怪とかやっぱ知ってるもんね。河童とか。
司会N 詳しく分かるわけではないけどなんとなく知っているという感じ。
ZUN その知ってるものが出てきて、東方でしかない解釈の仕方が出てくるところに面白味を感じるのかな。やっぱ全然知らない国の、例えばすごいマイナーな神話持ってきて、これはこういう感じですって言うんだったらもう架空でも変わんないわけですよ。そういうのと違うのは予備知識をみんな持っている。特に民話とか神話なり歴史なりは大体みんなある程度知ってるからそこは利点かなと。
司会S 逆にある程度みんな知ってそうなものを意識して選ばれるとかは?
ZUN それはそうだね。あまりマニアックすぎると独りよがりになるんだよ(笑)。結構あるけど。なりすぎないくらいで。
司会S 元ネタ関係でこれも勉強の話になるんですが、どういう所で調べられたり本に出合われたりとかしてるんですか?
ZUN まあ、本は本屋だね(笑)。それが一番だと思うな。
司会S 確かに(笑)。
ZUN なかなかAmazonだと探せないから、やっぱ本屋さんはいいなって。あと他のものだと意外と…京都なんてすげぇ面白いじゃん。その辺歩いてるだけでいっぱいネタが転がってる。それは別に京都じゃなくても実はそういう、どこにいってもそんなもの神社でも何でもあるから見てると面白いよ。
司会N 何を自分で工夫して出すかということですね
ZUN 何かひっかかったなと思ったらそこを深く掘り下げればいいだけかなと。
司会S もうちょっといけるかな。あと一つくらい。

<質問選考中>

司会N ではこちらの質問を
質問「神社仏閣等の史跡を取材する際に、どういった点に重きを置いて見ているのですか?」
ZUN いやまあ、普通の観光の仕方してますよ(笑)。あーすげぇなー、こんなーひろいなーみたいな感じですよ。
司会N そしたら自然とネタが見えてくると
ZUN まあネタがあればいいなと。ほとんどネタ探しに行ってるわけじゃなくて、興味ある所に行っててたまにネタがあればいいかな程度です、考えてるのは。
司会S じゃあ先に作品があって取材に行くという感じではあまりないんですね。
ZUN 僕はそれあんましない。したこともありますけど、ほぼ意味ないね。ネットで調べた方が早い(笑)。
司会N ふとした拍子に思いつくと
ZUN 面白いもの転がってるわって感じです。
司会S では時間もちょうどですので前半はここまでで。あっという間でしたね。では今から10分ほど休憩とします。
司会N 今から2曲流しますのでそれが終わる頃になったら帰ってきてください。

<休憩> (BGM 1.蓬莱幻想 ~ far East 2.花映塚 ~ after Higan Retour)

~休憩中の会話から~

放送 『ZUNさん講演会後中庭でメントスコーラチャレンジを行います。』
ZUN なにこれ?
司会N メントス食べてからコーラ飲むらしいですよ。
司会S それ死ぬじゃん。
ZUN 死ぬよ。救急車必要だよ。
放送 『ZUNさんもぜひご参加ください』

<会場内大爆笑>

ZUN ビールなら(笑)。メントスビールはやらんの?ダメ?シュワシュワすんのかな?
司会N すると思いますよ。炭酸ですし。
ZUN 炭酸弱いからね。コーラ炭酸強いんだよ。メントスコーラ、その誘いに乗ってやっちゃだめだよ。危ないよ(笑)。
司会N 特別な訓練を受けた方だけが参加してください(笑)。
ZUN 京大生のみね
司会N 私そんな訓練受けた覚えないですけどね(笑)。

…というような会話がおこなわれておりました。

(ちなみにZUNさんはメントスビールはやらずにお帰りになりました)

後半の部

III.肥大する東方 ~ 2007-2009

司会S それでは後半を再開したいと思います。後半は年表の2007年ごろから話を掘り下げていこうと思います。
司会N 2007年というと風神録がでた辺りですよね。このあたりの時期に会社辞められて独立されたと聞きますが。
ZUN そうそう。このへんがな転機でね。ニコニコが始まったぐらいかな。

<この辺でビールが登場>

ZUN ありがとうございます。会社辞めて独立したというか、まあ独立したけどもやってることはあんま変わんないから(笑)外身も中身も変わってはないですね。ちょっと時間に余裕ができたくらいかな。
司会N 独立に踏み切るとなるとやっぱり仕事辞められるわけですから何かしらあったのでしょうか。
ZUN あったねぇ。土下座して辞めてきたから。いろいろあったんです。あまり具体的すぎることは言えないかもしれないけど、ずーっとやってきたプロジェクトが…1年ぐらいやってきたのがポシャって。PS3の話だったんですけどもうやめていいよって言ってたんですけど、その後に名前が出てなかったけど、今でいうWiiが…その開発をしようみたいな感じになって、その企画が通ったのが僕の後輩だったので、その後輩の企画ができるまでは会社に居ようと。そんでいろいろ作ったり取材したりとかいろいろしたわけです。で、正月明けて戻ってきたらそれがポシャって。で、それが終わるまで居ようと思ってたからすげぇ辞める気満々になってさ。
司会N だいぶ前から独立する計画はあったんですね。
ZUN で、その日すぐに次の企画言われて。その時には2タイトル僕が一人でプログラムすることになってる。もう僕に仕事与えすぎててもうだめ。じゃあ辞めるよと。あまりにも会社が僕に仕事を負担させすぎてて。なので辞めました。その日のうちにいつも飲んでるメンバーに飲み屋行って、「僕会社辞めようと思う」って言って。正月早々(笑)。
司会S 皆さんのリアクションはどうだったんですか(笑)
ZUN なんで会社残ってるのかと思ったよとか(笑)。会社の七不思議とか呼ばれて。

<会場内爆笑>

司会S なぜ彼はまだ会社に居るのかみたいな(笑)。
ZUN 七不思議っていうけど七個もないんだけど(笑)。なぜかそういう風に言われた。
司会N もうだいぶ東方の方も展開されるし、独立する余裕は全然あったと。
ZUN 独立させられた感じだね。もう会社を出なきゃいけなくなってたね。
司会N なるほど。
ZUN まあそういう辞め方もあるんです。消極的退職、消極的独立(笑)。
司会S 新しいもの持ちたいからじゃなくて自分が持ってるもののために分かれるしかないと。
ZUN もうこれ以上は仕事できない。仕事を取るか同人を取るかっていったら、そりゃもう同人でしょう(笑)。でも別に会社の人たちとは仲いいですよ。その時に土下座してきた人とまた次に飲みに行きますからね。未だに一緒に飲んだりしてます。
司会N 会社辞められて開発環境とかもだいぶ変わりましたよね。生活とかも。
ZUN 生活は変わるね。会社行かなくていいからまた昼間寝ちゃうんだよね。
司会N 大学のころに戻っちゃったみたいな(笑)
ZUN あれ思い出しちゃってさ(笑)。でもやっぱそうなるよ。しばらくはそういう生活してました。昼間寝て、夜起きて開発する。結構最近までしてました。
司会N それ以降の作品作りにそういう変化が影響して来たりとかは?
ZUN あるかもしれないですね。まあだいぶ余裕ができたので、作品が作り込めるようになったって言ったらそうなんですけど、作品を作る合間に休めるようになったかなっていう。
司会S 逆に会社に居た頃の方が「これはメリットだったな」って思うようなところはありますか?
ZUN いっぱいあるよ。会社に居れば…給料がもらえる(笑)。売れなかったら生活できないっていう状態で作るのはつらいよね、どう考えたって。もちろんゲームってのは完成するまで金は貰えないので。会社員は完成するまでも給料貰えるんだもん。それは幸せですよ。
司会N 完成しても貰えるとも限りませんしね。
ZUN 会社員だとゲーム売れなくても給料貰えるからありがたいよね。あんなにいいことはない。でもさ急に、会社にも入らないで大学卒業したあとにいきなり同人でやるって言って、初めてゲーム作るってなったら一本目までなんてどうやって金集めるんだって話になるよね。最低でもバイトかなんかしないといけない。バイトだってそんな時間に余裕があるわけじゃないから、それで必死になっちゃうでしょ。
司会N ミスったら終わりですからね。
ZUN 特に同人はある程度金に余裕ができてからやらないと結果いいもの作れない気がします。そういう意味で僕は最初は会社に居ながらやった方がいいぞ、と言いたい。もしくは大学生の時に作るか。親の仕送りで作れって(笑)。

<会場内爆笑>

司会N やっぱ心に余裕がないと
ZUN 余裕がないときつい。大学が一番いいっちゃいいよね。まあ…勉強しろって話ですけど。
司会N まあ、この頃になるとだいぶ仕事なくても余裕ができてきたと。
ZUN もうそんなに不安ではなかった。むしろ会社に居る方が不安でした。
司会S 今のは苦労するところの話になると思いますが、ご質問の方で…これもよく聞かれることだと思いますが、つらいことは何ですか?と。あと逆に、東方project作ってて良かったな~って思うような瞬間はどんな時ですかというような質問を結構いただいているのですが。
ZUN そりゃあいっぱいあるけどね。ゲームを作るっていうのはすげぇ楽しいことなんですよ。だからその、完成した瞬間だけではなく細かい部分で。一つ一つ上がるたびにすごく嬉しい。だからその嬉しいことを続けていけば完成するっていうか。嬉しいこと1割、つらいこと9割くらいの(笑)。でもその1割のためにすげぇ頑張ってる。頑張れば頑張るほど楽しいですからね。曲を作って、背景作って、キャラ出して、パーンって動いたらできた。ってやっぱ快感ですよ。早くこれをプレイしてもらいたいっていう感じになるよね。つらいことは…いっぱいあるからな。パソコンの前に座ってるのがつらいね。肩痛くなるし、頸痛くなるし、腰痛いしさ。関節が痛くなるし、あと。
司会N だからこそできた時はやっぱ嬉しいものだと。
ZUN 体調崩すし…つらいことばっかだよ(笑)。
司会S 目標をどうやって見つけてますかというような質問もいただいてますけども、それが一つの目標だと。楽しさのために頑張るっていう。
ZUN 楽しさもその時々変わってくでしょうし、一生ゲームを作ることが楽しくてゲームを作り続けるとは思ってない。どっかで作らなくなるだろうし、そうだからといって引退という感じではなく、なだらかに引退してこうかなと。やっぱ将来的にも、やってることは違うかもしれないけど同じ楽しみを味わう、むしろより深い楽しみを味わえるような目標に向かって今結構突き進んでいるかなと思ってます。まあ居酒屋ですけどね(笑)。
司会S さっきのお仕事辞められた経緯とも関連するんですけど、スライドの方(…※6)も「肥大する東方」とちょっと仰々しいタイトルになってますが…
ZUN なんかあったタイミングって感じはするよね(笑)
司会S …質問の方を一つご紹介します。
質問「ZUNさんはゲームをメインにたくさんの作品を世に出していると思いますが、作品やキャラクターやBGMなど感想や反響はどれほど見ているのでしょうか?また、東方キャラや音楽の人気投票の結果等はご覧になっているのでしょうか?
ご自分の想像以上の反響を受けているなと思ったものがあれば、ぜひ教えて頂きたいです。よろしくお願いいたします。」
ZUN 昔は見てたけど、最近は見ないことが多いね。
司会S 昔は見ていらしたんですね。
ZUN 全然見てましたよ。ふつうに投票とかもしてたもん(笑)。

<会場内爆笑>

司会S 投票してたんですか!(笑)因みに誰に投票してらしたんですか?
ZUN 誰だったかな?まあ霊夢に投票しましたよ。
司会S
司会N
確かに。
ZUN 全然違ったらあれだけど(笑)。ちゃんとコメント付きで書いてたから。
司会S じゃあ昔のやつ見たらそれあるかもしれない?
ZUN あるはずだよ。コメントでちゃんと書いてるから。ZUNって書いてるよ。最近は見てないね。いつやってるとかも分かんない。それは勿論、昔は反響が楽しかったですけど、今はそんなに反響楽しみにしてないからじゃない。あと単純にネットを見なくなったんです。なんかマンネリ化してきてさ、ネット自体が。
司会S この頃世間の方の東方の受け止め方がだんだんと有名になってきたと思うんですが、そういうものを見られてこの辺の作品作りとかで考えたこととかはあります?
ZUN 勿論、ないことはないと思うんだよね。でも具体的に「これがあったから今こう変わった」ってあんまりよく分かんなくて。僕としては自然と変わっていってると思うんですよ。だから今当たり前のようにやってることはいろんなものの影響を受けた結果だと思う。で、それで具体的にこれがあったからこうでしたっていう例が挙げられなくていま困ってるかな。思い浮かばないんですけど、でも変わってるとは思います。2次創作の影響もきっと受けてるでしょうし、ファンがいるからそれに対して考え方が変わってるということは当然あると思います。無きゃ困る。
司会S でもそれなに自覚的な感じではない。
ZUN 意図してそれを狙ってたり排除したりはしてないかな。かといって完全にファンの言葉を無視するっていうような作り方もしない。
司会N 適度に見たり、適度に無視して。
ZUN 肥大化するあたり。
司会N この辺から大きくなってますよね。
ZUN この辺はさっきも言ったけどニコニコがあったタイミングですからね。ニコニコ動画でネタが増えたから変わったというよりは、あれによってみんな当たり前のように動画を作って動画を見るっていうのが主流になったんだよね。それまでは…例えば音楽単体だったり絵を一枚見るとかそういうネットの使い方して、メインは文章だったのね。それが完全に動画になった瞬間があって。それに動画とシューティングゲームの相性って凄くいいから、そこを売りにしていけばいいかなという感じ。あれの前に結構構想があったんです。ニコニコが始まる前にネットギャラリーっていう考え方を普及させたくて。ゲーセン行ってるとゲームで遊んでる時に後ろで見てる人をギャラリーっていうんですけど、そのギャラリーがいて、そのギャラリーをちょっと楽しませるようなプレイをするんですよ、うまい人とかがね。それが快感であって、後ろで誰も見てないってたぶん盛り上がんないシューティングは。勿論ストイックな人はハイスコア稼いだりするんでしょうけど、ちょっとうまいなくらいの人はたぶん見てもらいたくてやってるんです。それを僕はネットで同時に見れて、ネットで「あ~あ」とかのコメントをゲーム画面出したりとか考えてたんです。そういうのをいずれやりたいなとか思ってたんだけど、ニコニコ動画でコメントが出るのを見てこれで完成したなだろうと。もう全部これでいいんだと。プレイするの見させてコメント入れれば同時で見る必要もない。でも後から見ても昔の人と同じように共感取れるってのはこれでもう完成してるじゃん。その使用作る必要なくなったなって思った瞬間がそれ。全てそのネットを使ったいろんな新しい考え方が全部動画でとって変わられちゃったかなと。
司会S ちょっと脱線しますけどZUNさんゲーセンで魅せプレイとかしてたんですか?
ZUN まあねしてたよ(笑)。

<会場内爆笑>

ZUN やっぱ死ぬと首をかしげて「チッ」とか(笑)。やってました。

<会場内爆笑>

司会S で後ろのギャラリーが「あ~」って言って。
ZUN あれ死ぬとね後ろのギャラリー去っていくんだよ(笑)。そういう楽しみをネットで持たせたかったんだよね。でももうニコニコがやってくもので十分だったって。それでいいやって。
司会S 生放送とかもそんな感じですよね。  
ZUN そのときはまだ生放送っていう概念すらなかったけど、まさか生放送する時代になるとはね。そういう時代になったらこっちの考え方も変えていきますよ。
司会S ゲーム実況なんて言葉がねぇ。だって昔はゲーム実況ってなんだよって話ですよ。
ZUN まず実況ってなんだって話ですよ。それがもう普通に遊びながら喋るっていうのがコンテンツとして成り立つ時代になったんだよ。でもそれもすでにちょっと前の話なんですよ。2,3年前というか。今また少しずつ変わりつつあるのかもしれない。
司会N 次は何が出るんでしょうね?
ZUN それは分かんないよね。で、そのゲーム実況っていうのがタレント業の方に動いていっているので個人の手からだいぶ離れていってると思う。有名な人を使って宣伝するとかそういう方に行ってるので、また次のゲームの新しい楽しみ方が出るのかなって思ってます。それをドワンゴがやるかは知らないけど。
司会S それもやっぱやる人の手から離れてっちゃっうって感じなんですかね。
司会N プレイも一つのコンテンツなんですかね。
ZUN ゲームを見るっていうのもコンテンツなの。そこからお金が取れないとゲーム業界続かないので、そこを考えるとこなんじゃないですかね。

IV.東方からZUNへ ~ 2009-2012

司会S では次の話題へつながってくると思うんですけど。
司会N 2009年以降ですかね
ZUN この時はほんとに2次創作が増えるタイミングでしたよ。「肥大する東方」って名前でしたけどその次に行って、もう増えた後だね。
司会N 大体このあたりからコラム掲載(…※7)始めたり、2軒目ラジオ始めたり、ZUNビール始められたりと大分表に出るようになって、活動の仕方が変わってこられた。
ZUN そうそう。これはやっぱりニコニコがあってゲームを楽しむって感覚が変わってきたタイミングと、この頃になるととっくに30過ぎて体力的につらくなってきたので(笑)、緩やかにコンテンツを、ゲームを作ってるZUNという人間が東方を作ってるんじゃなくて東方を作ってる人として出て、最終的には僕を東方にしてしまおうという考え方を持ち始めたわけです。活動も出来る限り表に出たり生放送してみたり、そこで喋ってることも東方のことではないことにして、コンテンツを自分に移していく。っていう感じでしたね。
司会N 東方からZUNさんに興味をもってもらうと。
ZUN 酒のコラムやったり2軒目ラジオやったりとまさにそうだね。その結果答えとして出てきたのがZUNビールだね。あれもう別に僕が東方として一切やってないし、東方って感じでなくやっても東方ってジャンルになるみたいな感じで。あれでちゃんと人が集まるんだったら一応うまくいってるなと思ってる。そういう風に考え始めたのがちょうどそのねぇ今から……もうこれでも6年前とかなるんだ(笑)。だいぶ経つなぁ。6年前ぐらいはそういう考え方だったね。ちょうどゲーム実況とかも出始めた頃だったので。
司会N やっぱそういう活動のきっかけっていうのは生放送とかゲーム実況?
ZUN みんなで楽しんでるのを見てそれに合わせてったり、自分の歳とか自分のライフスタイルにちゃんと合わせてったり。
司会S 個人を発信していくというところで関係あると思うんですけど、同じような質問2つ頂いておりまして
質問「最近、おしゃれな着こなしやイケメンなゲームクリエイターもよく見られるように思いますが、クリエイターはおしゃれであるべきだと思いますか?」
質問「いつもオシャレなシャツを着ていますがどこで見つけて来てるんでしょうか?ご自分でウィンドウショッピングなどで見つけているんですか?」
  どうですか?

<会場内爆笑>

ZUN オシャレ…ありがとうございます(笑)。オシャレっていう感覚ではないですけど、ちょっと特徴はつけたいというか。これはもう出る前…2009年よりかなり前から人前へ出るときは特徴づけようとは思ってました。やっぱその、わかんないじゃん。皆さん見てる黒髪メガネの人間で痩せてるっていわれても山ほどいるんだから(笑)。で、ある程度特徴づけて、例えばハンチングかぶるようにしてれば一応このZUNだなと分かるとか
司会N 結構このハンチングも和柄でかなり特徴的なんですよね。近くで見ると。
ZUN いっぱい持ってますよ。やっぱりこれ人前出る用なんですよ。キャラクターとして見せる用というか。ビール持ってるとかも人前で見せる用だよね。まあ見せてなくても飲んでるけどさ(笑)。でまあ一応そういうキャラクターをつけるっていうことを、僕そもそもゲームにキャラクターをつけることを売りにしているので、作ってる人もキャラクターを持っているってのは当然なんだよね。その一環の一つとしてやってます。
司会S 東方あれだけキャラクターいるけれども、例えばシルエット見ただけでもある程度キャラクターがわかったりするっていう話がありますけど、それがご自分にも適用されている感じで。
ZUN もちろん。でもやっぱそれはそうでしょ。どこまで作品通りの見立てになるかどうかってのは難しいですけど。すっごいかわいい絵描いてるのが、たいてい野郎のおっさんだったり(笑)。というのはまだ仕方がないといえば仕方がないですけど、それはそれで個性がでてますから。まあ結構重要なことかなと。オシャレである必要はないかもしれないけど人前に出ることは、ちょっと見られることを意識してる方がいいかと思います、クリエイターも。そういう人だと作品に対しても見られること意識してますから。
司会S 昨日の打合せの時も、「あっZUNさんだ」って中村君がすぐ先に気づいて。夜暗くて遠めだったけどパッと見てすぐ分かって
ZUN 分かるように歩いてます。普段はそうでもないんですけどね。やっぱある程度人に見られることは意識した方がいいよって感じかな。

V.インディーと海外、挑戦と変化 ~ 2013-2015

司会S そこからもうほとんど連続した話になると思うんですけど
司会N 今の話ですね。最近ですと海外層やらインディーゲームだったりが話に出てきますが。
ZUN そうなんだよな。結構また変わってきてね。今の話はちょっと前で、でここ2,3年になるとまたゲーム業界が大きく変わってきてね。アマチュアのゲーム、もうインディーゲームって言い方してる…特に関西の人はそういう言い方してるんですけど、それが出てきて、それに対して注目を浴びるようになるわけです、日本のゲームが。そうなった理由もゲーム業界がみんなソーシャルゲームにいくわけです。で行ってる状態でそうじゃないものを求めている人もいるわけで、チャンスがいくらでも転がっていると。そこにスポンサーも付きますよっていう流れが2,3年前ぐらいにあったんですよね。でやっぱ東方がそこを無視するわけにはいかなくて。それを無視してしまうと結局失敗してしまうというか、ゲーム業界にとってあまりいい感じじゃないかなーと思う流れがあったんですよ。で、これはまさに今動いている状態のことだからあまりこれから先どうなるとかは軽はずみには言えないというか何とも言えないですけど、ゲームはしばらくは面白いことが起きそうな気がするなと思って見てます。特に海外がどうしても出てきてしまうんだよね。
司会N 最近凄いですよね。
ZUN この流れってね、10年前くらいも所謂コンシューマーゲーム業界が凄くこうだったんだよ。もう日本市場だめだから海外にいこうと。海外しか見てないんだよ。そういうことやってるから失敗するんだよ(笑)。今割とインディーはそっちに向かってるんだよ。日本の市場は死んでるから海外に行こうという流れがあって、「あ~、見たことある~」っていう(笑)、だいたい悪い方で見たことあるーっていう感じをちょっと感じてるんだよ。もちろん僕は海外に全然行ってもらってもOKだけどメインターゲットは完全に日本です。それは変わんないんじゃないかなって。海外に行き過ぎる流れを少し抑えつつ、最低でも東方だけは抑えつつやり方はないかなって思ってます。
司会S 質問頂いてる中で海外進出で、steamなんかのプラットフォームに登録するとかは考えておられるのかという質問がありますが。
ZUN そうそう、考えまくってるけどね(笑)。めんどくさいんだよね、出たやつとか。
司会N Playismで東方輝針城だしたりとかはやってますよね。
ZUN なんだろうね。めんどくさいんだよね結構(笑)。
司会N 暇があったらやるくらいの
ZUN やるかもしれないね。まあやるん…じゃないかな。
司会S あとここ数年スマートフォンの普及が物凄くて、といいつつそもそも上に出してるのはガラケーなんですけど、やっぱりそれがゲームにも大きな影響を与えていると感じますか?
ZUN 僕もゲーム遊べたらスマホのゲームはするからね。
司会S でやっぱり質問の中にも東方のスマホゲーム出しますか?とかもありますよ
ZUN 可能性としては全然あるでしょうね。めんどくさいならやんないってだけで(笑)。やんなきゃいけないって考え方ではたぶんやらない。なんとなくやって楽しいこと思いついたらやるかもしれない。一から勉強するのめんどくさいなとはおもうけどね(笑)。でもまあサクッと移植できるとかなら試してみるかもしれないもんね。
司会N 思いついたらやるくらいで
ZUN ただやっぱスマホは結構切っても切り離せないしね。PCは結果として残るかもしれないけど、携帯ゲーム器とか残らないかもしれないからね。このままいくと。
司会N 数年後どうなってるかわかんないですからね。
ZUN なかなか据置でちゃんと腰据えてゲーム遊ぶ人って少ないよね。いちいちテレビ点けてゲーム機起動してさ、でロゴ見てさ。やっぱなかなかやんないんだよな。ちょっと前時代な感じがする。まあ僕はそれが大好きなんですけどね。
司会N 「ゲームをやる」人間ですからね。「ついでにゲーム」じゃなくて
ZUN スマホも電車の中で遊べるたりといいし、ただどうしても操作が画面で操作するっていうことに難点があってできるゲームに幅があるような気がするし、そこを突けばまだゲーム機も可能性あるかなって。
司会S 新しいことを今から学びなおすとか作り直すとかなかなか大変だというおっしゃってましたが質問に
質問「東方以外の作品を遊んでみたい。なんで東方だけなんですか?」
ZUN でも今の話の流れでいうと、東方から僕にコンテンツ移ったんでしょ。僕が別のゲーム作ったら結局東方だよそれ(笑)。コンテンツを僕の方に移してしまった以上そうなるね。僕は東方以外のものは作れない。ビール作ったって東方になるんだから(笑)。

<会場内爆笑>

  居酒屋開いたって東方になるんだよきっと。だからもう別のゲームなんて一緒だよ。東方の外伝みたいな形になるんだよ。僕がそうじゃないと思っててもユーザーがそう受け取るよ。
司会S みんなが東方にしてしまうという。
司会N そういう土壌が出来ちゃったんですね。
ZUN そういう風にしたんだよ、あえて。ただね、僕がこれから先もう一回東方みたいなものを新しく始めても同じように成功させるってことは出来ないと思う。もう不可能だと思うんだよね。だからもうそうだとしたら、一人一個幸せになるものが作れればそれでいいんだよ。っていう風に考えるようにしました。いろんな一作をバンバン出していくことが幸せか、ってたぶんそりゃ幸せに感じる人もいるでしょうけど、一つ出してそれを一生大事にできればそれでいいのかな。物作る人なんて山ほど居るんだからさユーザーは違うもの遊びたいと思ったら違う人が作った違うもの遊べばいいだけなんだよ。それが一番幸せな未来なのかなと思ってます。
司会N 作家性がでていいですよね。この人の作品はこんな作品みたいな。
ZUN 一人が作ってマルチでいろんな作品が見たいっていうのはちょっと、それはユーザーのわがままかなっていう気がするよね。やっぱ違う作品見たかったら違う人の作品を見るべきだよね。宮崎駿の作品なんて全部違うアニメ描いてるように見えるけど、あれ全部ジブリで同じ作品だからね。あんな感じでいいんだよ。
司会N 宮崎駿がロボットアニメ描いてもなんか違いますしね(笑)。
ZUN ガンダム見たかったらガンダム見ますよ(笑)。 
司会S 一つ感動的だと思ったのは今年で東方が20周年ということですけど、僕らがプレイしてやってることとしてはずーっと変わってないんだなと。基本的には同じことのはずなのに毎回楽しいってところがすごいと思うんですけど。
ZUN 別に何か新しいことや凄い奇抜なことが楽しいことには結びつかないんだよね。結構やもするとクリエイターはそこに行くんだよ。ありがちな若いゲームデザイナーの失敗は人と違うことをやろうとすることだよね。大体違うことをやろうとしてそれが面白いことだと思って個性だと思ってしまうんだけど、ユーザー的には新しい、斬新だって思うかもしれないんだけどむしろそれだけだよ。奇抜にしか見えない。もちろんそれの中にちゃんと裏付けのある面白さがあって初めて創作だって言えるんだよね。
司会N 今回の紺綬伝の紺綬の薬の設定とか
ZUN ゲームの中ではいっぱい実験はしてますけど、大抵は失敗するんですよ。できたけどやっぱり良くないなぁみたいな。
司会N うまくいったのがゲームに残ると
ZUN でもうまくいかなくても結果そのまま出しちゃうけどね。東方の場合は。「今回ちょっとうまくいかなかったな。でもまあいいや次作ればいいか」みたいな感覚。これあまり商業の会社では考えにくい考え方だと思うよ。
司会N 個人の身軽さだからできることで
ZUN そうそう。失敗したっていいんだよ。
司会S 作り続けるという所でこんな質問がありました。
質問「続編制作のモチベーションが最も湧くのはどんな時でしょうか?」
ZUN 続編制作のモチベーションについてだよね。普通ゲームに限らず創作の一番重要なことはモチベーションなんだよ。大体みんな心折れて作んなくなるからね。その理由は思った以上につらいからですよ。僕はもうそのつらさを知ってるからモチベーションはあんま下がんない。つらいのが当然だと思ってる。思ったよりつらくなかったっていうテンションの上がり方ですよね。これはもう長く続けたからかなと思うんだけど。楽しいことだらけだと思ってたらきっとどこかで心折れますよ。やっぱり、すげぇ頑張って作ったんだけど全く反響がないとか当たり前のように起きるはず。すげぇ面白いと思ったのに、もう死ねまで言われたりとか(笑)。凄い辛いことが絶対に起こるんだよ。でもそれはあって当たり前くらいまで知って初めてようやくというか、自分でモチベーションをコントロールするって感じだね。酒飲みながら。
司会S 困難にぶち当たった時の気分転換だとかそういうときの楽しみは何ですか?とか、あと娯楽は何ですか?とかいう質問も結構いただいてますが。
ZUN あるんだよね。でも本当に詰まることは少ないんですけど、スケジュール的には結構カツカツで行き詰ってももう行くっていうことは結構あるんですけど、1日2日だったら酒飲んで、「もうやめよう、飲み行くぞ」って急に誰かに声かけて飲み行っちゃうんだけど。僕の場合はストレス解消するとしたら飲みに行く、誰かと。
司会S やっぱり居酒屋で
ZUN 居酒屋行って。それが一番。まあ家で作ってる時も飲んでるんですけど、それと居酒屋で誰かと会うのはまた違うからね。でまあそこで話して「こいつの方が絶対つらい目に合ってる」って思って、やってる(笑)。大変だよ物を作るって。楽しいことだらけではないけど、人前出るときは「いやこれ楽しいんだよ」って言う(笑)。やっぱそういう風に見せることが大切。実際その、出てしまうとそのつらかったことは大分忘れちゃうんだよね。後から考えたら大したことなかったんだなと。人に何言われようが大したことなかったなみたいな。
司会S 居酒屋の話も出ましたけど今後の人生の展望というか、大きな目標の話をお伺いしたいのですが。
ZUN こういうこと言ってもまた世の中が変われば変わるからね。それが僕の考え方であるから、あんまり大きくはいえないんだよなぁ。
司会N ここで言ったせいで変わるということも?
ZUN その可能性もある。でこれから先どうなるかはあんま言えないよなぁ。ほんとに身近な事でも…うっかりなかなかね。来年の事を言うとアレが笑ってしまう(笑)。もう来年の事すらいえない。近い未来まではこういうこと言えるってのはだいたいスケジュールで組まれてる。まあ将来の展開とかそんなにないけどね。でもまあ、今すぐもう作るのやめたとはならない。本当は早く引退したいですよ、正直(笑)。他に僕の代わりになるものが出てくれて、やってくれるのが僕としてはすげぇ幸せな流れだから。で僕はもうちょっと自由にね…。結構現役な感じでやってるけど、大変は大変だからさ。なかなか無いんだよそこが。
司会N 今後もだいたい流れを見て、その流れに沿ってやっていくみたいな
ZUN あとは10年前とちょっと変わって、二次創作あっての東方という考え方がたぶんこれから変わってくるかなと思ってます。
司会NS それはどういう?
ZUN これはねぇ……あんまり、だから言えないなぁ(笑)。あんまり言うと結構他にコミケの事とか絡んできちゃうので言いづらい、言いづらいことはいっぱいある。でもまあ変わっていくんじゃないかなと思ってみてます。勿論そういう予想が外れることもある。そうしたらもう直ぐに考え方変えますから。
司会N 昨日こんなこと言ってたけど全然違うじゃないか、って(笑)
ZUN そうそう違った、って。例えば昨日こういう雰囲気で、きっと今日も講演聴いてる人はこうかなと思って来てみたら、「あ、全然違う人だった」っていう考え方になるかもしれないけど、まあ予想通りです(笑)。
司会N あとは2015年は変化の年っていうことを今年の初めに言って話題になってました。今年もだいたい終わりに近づきましたがどうでしたか今年?
ZUN 2015年は面白かったね、いろいろと。やっぱり予想通り変化したので。世の中も変わりましたし。
司会N うまいこといった…?
ZUN うまいこといったかどうかは分かんないですよね。でもやってて楽しい年でしたよ、いろいろと。私生活も楽しかったし(笑)。
司会S 来年の話とかそういう近場の未来の話とかは難しいと思うんですけど、それじゃあずっと飛んで居酒屋を開くお話を。
司会N もう遠い未来のお話を。
ZUN これ言うんだよ。昔から、居酒屋やりたいって言うと「今すぐ開けますよね」って(笑)。そりゃ確かに今すぐできますよそんなことは。でも僕が居酒屋って言ってる理由はそうじゃないからと。それは遠い未来に目標を置くことで近い未来の目標を作れるっていう。例えば将来総理大臣になるって言ったらそれに対してだいぶ今活動するでしょ、っていう。そういうことと一緒なの。そんで夢は居酒屋であると。
司会N 「イザカヤ」という目標があってそこに向かっていると
ZUN やっぱねぇ、今同人ソフト作ってる人たちももうだいぶ歳を取ってきて、これから先も同じ流れのまま歳を取ってくことが予想着くわけです。そうするとね、60,70とかなった時には同じぐらいの世代の人で東方の話が出来たり、同人ソフトの話ができる人が当然ごろごろ出てくるのね。そういう人が集まって、「いや~昔こういうのあったね」ということが出来るような場が僕の中の目標なわけだよ。
司会S そうやってみんな集まる場所を作りたいと
ZUN でもそれも楽しいじゃん。自分がそこに居たら。たまに出てきて、店番は孫に任せてさ(笑)。
司会N 一旦離れると人って結構集まれないですからね。
ZUN そん時に確実に今とは東方の形は違うはずなので、それに向けてじわじわ少しずつ自分も変えてかなきゃな、という気はしてる。そのための本当に大きな目標として置いてる。で結果必ず居酒屋やんなきゃいけないってわけじゃないです(笑)。勘違いしちゃいけない。今の目標を作るためにそうなってるだけです。
司会S 結構居酒屋については具体的な質問も来てますけどね。何県で開きたいですか?とか

<会場内爆笑>

ZUN その時には道州制になってるかもしれない(笑)。今言ったってしょうがないんだよ。日本があるかどうかも分かんないですよ(笑)。そういうことを全部想定して、今細かいことは決めれないと。その時に合わせて変えますよという話です。何県がいいかって聞いてどうるんだろう。
司会N うちの県だといいなみたいな感じですかね。
ZUN じゃあやっぱ人口の少ない鳥取県とか違いますか(笑)。
司会S 少ない方がいいんですか(笑)。
ZUN そしたら移住してくれるかもしれないよね(笑)。
司会S ではちょうど話も一周した感じですけども、ここでちょっと拾えなかった質問をいくつか。先程の作り方の話にもなるんですがもう一つさらに手前の話で
質問「何かを創るのに、才能は必要でしょうか」
質問「何をもってして今の感性を手に入れたのか?」
ZUN わかんないよねそんなこと(笑)。才能ってのがちょっといまいちピンと来ない。でももう、才能は…必要なんじゃないの?(笑)とは思うけど何が才能か分かんないからね。ないよりはいい、あった方がいいと思うんだけど。まず才能が何かっていうことを考えて、例えばそれが凄いうまい絵が描けるとかだったらたぶんそれは才能ではない。それはただの技術であると。勉強すればそれくらいはできるけど、それが必要とかではないんだろうね。
司会S 単純に技術で絵が描けるとかいうことよりももっと上の話で?
ZUN 才能ってそういうことをたぶん言ってると思うんですけど、たぶん…なんだろうね。難しい質問過ぎてなかなか答えられないっちゃあ答えられないし、僕にする質問か?っていう話だよね(笑)。それさあ「才能が必要です」って言ったらなんか僕が才能があるみたいに見えちゃうじゃん(笑)。すげぇ恥ずかしい言い方になるけどね。「才能なんかいらないですよ」みたいな言い方すんのもなんかムカつくしさ(笑)。
司会N どっちに答えてもちょっと(笑)
ZUN この質問凄い答えにくい質問だなと。
司会S そういうことを聞かれるよ人にご自分がなられたんだなということはどうでしょう?そんなこと聞かれてもっていうこともあるんでしょうけど。
ZUN 自分は才能持ってるなっていう人は大抵持ってない(笑)。やっぱそういう人よく会うけど。自身はかなり必要ですけど裏付けのある自信を持ってほしいね。俺はやればできるやつなんだっていう人は大抵できない。
司会S まずやって何かやって結果を残すっていうことなんでしょうか。
ZUN やれば…わかるよ。ゲームだったらゲーム作るしかないんだよ。そこで初めてもしかして自分は才能なかったって気付く可能性はあるけど、それはそれでいろんなカバーの仕方あると思うので。凄い技術力高めてもいいわけだし。
司会S では話も一区切りついた所で、時間もだいぶいい時間になってきました。
ZUN ずーっとやってきて10年以上前の話は割と具体的なんだけど、新しくなってくと抽象的になってきたね(笑)。質問と言い、答えと言い。新しい方がそうなんだな。まあ生き方的にもそうなんだよ。昔だったらもうちょっとまっすぐ、作りたいものがあるから作るって感じだけど今はもう、「なぜ作るんだ?」みたいなことを考えてから作るみたいなことがやっぱあるので。まあ…そうなるよね、長く生きると。
司会N がむしゃらな時代と考える時代。
ZUN ちゃんと考えて行動するようになった。これを書いたら炎上するかもしれないっていうことは書かない(笑)。

<会場内笑>

司会S いろんなお話を聞いてどういうことなのかなというところは皆さん空気で感じ取って頂けたらと思います。

<プレゼント企画>

~Epilog~

司会N 2時間と長いようで短い時間でしたが今日はありがとうございました。
ZUN とりとめのない感じでしたけどね。
司会S そうですね(笑)。とりあえずこんなメッセージをいただいております。
「来年から社会人です、何か一言、アドバイス下さい! 東方は風神録からですが、これまでもこれからも、神主さんの創る世界と音楽が大好きです。社会人になってもコミケ行きます。ありがとうございました!!!」
ZUN 社会人でコミケ…その日有給とるとバレバレなんだよ(笑)。これちなみにこの場で来年から社会人の人どのくらいいる?

<会場内何人か挙手>

ZUN 意外とでも少ない。大学生いっぱい居たからもっといるかと思った。結構社会人になると大学と違って結構つまんなくなる人が多いですよ、人生。学生の頃って学校行ってすげぇつらいなあ、大人はずるいなあと思ってるけど、大人はつらいね(笑)。朝早く行ってずーっと拘束されて、夜まで居て仕事するでしょ。学校だったら授業受けてテスト受けるだけだけど、仕事はやったけど結局怒られるだけってこともすごく多いし、苦痛なんだよね。そういうと身も蓋もないですけど、本来そこからようやく人間らしさが始まるというか、今まで誰かに育てられてきた子供がようやく大人になるっていうタイミングなの、一人の自立したね。そんな人がゲーム作ってんじゃねぇよって話だけど(笑)。そういうタイミングだってことを自覚して、つらいことがおきてももうこれが人生なんだと受け入れて初めてようやくやっぱりこんなにあちこちに面白いこと転がってたんだって見えてくるので、そこまで頑張りましょう。つらいなあ、仕事これ合わねえや」って辞めてたらたぶんきっと一生そういう生き方になってしまうかなと思います。ほんとにブラック会社だったらすぐ辞めてください(笑)。仕事しないっていう選択肢はあまり選ばない方がいいのかなと思います。仕事しか生き甲斐がなくなるので。生き甲斐を失うのはやっぱつらいです。もし会社とか嫌だったら同人とかインディーみたいに自分で起業してしまうという手もありかなと思います。
司会S ZUNさんも起業されたような感じですしね。
ZUN でもほんとに修羅の道だし、さっき言ったようにもしかしたら才能がないと成功しない。才能1割、運9割みたいなね。ほんとに大変な世界なのでおすすめをして…後で恨み抱かれても困るかなと(笑)。選択肢としてはあるので、まあ人生捨てたもんじゃないかなと。いろんなこと出来ますよ。もし失敗して腐ってもどこか細かいところで面白さを見つけられるかなという気はしますね。いや~でもその中でも一応お酒があるといいね(笑)。
司会S 質問というかメッセージというか、「そんな酒癖で大丈夫か?」と

<会場内爆笑>

ZUN うーん、大丈夫じゃないな(笑)。大丈夫?問題ないの?
司会S 社会人の先の話になるかは分からないですけど、奥さんとの馴れ初めとか嫁のゲットの仕方とか来てますけど(笑)
ZUN なるほど。こんな質問していいのかはわからないけど、ここで既婚者の方ってどれくらい居ます?

<会場内ごく少数挙手>

ZUN 一人?いや二人?じゃあ彼女とか彼氏のいる人どのくらい居ます?

<会場内微妙に挙手>

ZUN これ挙げづらいか(笑)。

<会場内笑>

司会S あんまり見当たらないですね。
ZUN 僕の予想ではほとんどいないと思ってるんだよ(笑)。失礼な予想ですけど。これはあれだよ…創作が楽しいとか今の生活が楽しいっていうこともあると思うんですけど、居た方が楽しいよ、やっぱり。結婚したりして子供出来たらやっぱ楽しいですし。と…なんだろうこの(笑)。だから一応社会人になったりしたときにはちょっと意識して、何歳までには結婚しようかなとか考えといた方が幸せかなと思います。いいよ一生独身でもって思ってる人はたぶん40近くで後悔するよ。
司会N あん時結婚しとけばなと
ZUN 身体も融通聞かなくなるし。…なんだろうこれ(笑)。
司会N では今日はありがとうござました。今ので締めみたいになっちゃいましたけど一応何か〆の言葉を一言お願いします。
司会S 会場の皆さん向けに何か
ZUN 結構目の前で必死にメモしてる人もいるけど、そんなにメモするようなことも大して言ってなくて。まあ僕みたいな考え方をすれば僕みたいになるということはまずないです。時代も違いますし、同じ時代に居たとしても同じ考え方の人が同じにはならない。参考程度に話を聞いて、「あ、こういう人もいたんだなー」って感じで聞いてくれたかなと思ってます。まともに「あの時ああ言ってたんですけどどうすればいいですか?」とか言われると若干めんどくさいんだよね(笑)。酒飲んで「昔はああだったよ」って言ってるような内容だと思ってください。酒と言えば…

<2軒目ラジオの告知(…※8)>

ZUN 楽しかったですよ、人みて。なんか10年前とかも結構講演やりましたがあの時と人の層が変わってない。変わってないってのはその人たちが同じ人っていうのじゃなくて同じぐらいの人間達が来ているという意味。
司会S 興味を持つ層がですか
ZUN それがそのまま若い層に変わったと。で昔聞いた人たちは30,40とかになっちゃうから。ていうのをみてちょっとうれしく思いました。10年たっても変わらない。人は変わってるけど本質は変わらない。
司会N なんか懐かしい?
ZUN 懐かしい。それがちょっとうれしかったですね。なかなかこういう若い人には囲まれないから(笑)。それをこの熊野寮という、ちょっと恐ろしい場所で…。
司会N 申込するときもちょっと不安という人もいましたしね。
ZUN さっきトイレ行く時ちらちらみたけど、凄いね。魔窟だね。いやでもワクワクしましたよ。こういう所に来れる日が来るとは思わなかったからね。
司会N これが我々の日常なんですよ(笑)。
ZUN この日常から社会人になったらどうなるんだろうね(笑)。会社でやってけるのかな。
司会N 一応どこででも住めるとは思いますよ(笑)。
司会S では名残惜しくはございますがちょうど時間通りに巻いておりますので
ZUN 意外と時間通りだね。もっと押すかと思ったんだけど。あ、じゃあこの話。質問コーナーに書いてあってしなかったんだけど、「東方はオワコンって10年前から言われてるけど」っていう

<会場内大爆笑>

ZUN ほんと(笑)。オワコンって言われ始めたのが、オワコンって単語はなかったんですけど当時、 10年前ぐらいがほんとに今年で東方は最後だって言われてましたね。永夜抄の後ぐらいにいっつも言われてたよ。最近逆に少なくなってきたI(笑)。これに関しては…ほんとにオワコンだったら早くオワコンにしてくれてった方が僕はそれはそれで楽しく生きてたかもなっていう考え方を持ってます。
司会N 早くオワコンにならずにこうなっちゃいましたね。
ZUN こうなっちゃったね。
司会S こうして人が集まるということはそれだけまだまだ求められているということなんでしょうね。  
ZUN そういうことだよね。でも求められることも昔と変わってきたかな。昔東方に求めてたコンテンツ的にはもしかしたらオワコンで、毎年新しくオワコンになっていくって感じかな。
司会N 一つのオワコンが出たらまた次のコンテンツが出てくるという感じで
ZUN もしかしたらファンの中でのオワコン、自分の中でのオワコンが繰り返されて世代が変わってるのかなっていう気がします。「オワコン?お前の中ではな」って(笑)。

<会場内笑>

司会S はい、では…ありがとうございました。
ZUN こういう終わり方しましたけど…(笑)。このあとメントス気を付けてね(笑)。
司会S それでは名残惜しくはございますが、今日は面白い話をたくさんありがとうございました。
ZUN またこういう話したいですよ。この続きは2軒目ラジオで(笑)。ちょうど終わりそうなときに話しちゃうけど、ちょっと相手が若い、一回り以上下の人間だと会話的には引き出そう引き出そうとしてるけど、結局僕がしゃべらないと話が進まないじゃん。だから予定ではもうちょっとおかしな話もできるかなと思ったけど割とまじめな話にね。これが同世代の人間とかもっと昔を見てきた人間だとまた違った僕が見れますよ。そういうのは酒飲んでる席で是非。
司会NS それでは、本日はありがとうございました。

<会場内拍手> <ZUN氏退場>(BGM:空飛ぶ巫女の不思議な毎日)

注釈

文責:熊野寮 中村